かつて日本が経済成長と人口増加で高度経済成長を遂げていた時代、会社も成長し続け、従業員の終身雇用や年功序列による管理が約束でき、それに対して従業員も長時間労働で報いる時代がありました。この時代は従業員よりも会社のパワーが強い時代であったと言えるでしょう。
従業員に転職の選択肢はなく、就職した会社に定年まで働き忠誠を尽くすのが当たり前と考えられていました。しかし、仕事を嫌々ではなく、社内には目標と思えるロールモデルが存在し、将来のキャリアを思い描くことができました。また、進んで仕事に励む従業員が多数派でした。
会社は案件や数値の管理だけをマネジメントしていれば、部下は猛烈に働いてくれるので、マネジメントにかかる時間や手間は少なくてもうまく回っていました。人に向き合う必要はあまりなかった時代でした。
しかし今、労働力人口は減少しており、老齢化率は上昇、経済成長は頭打ち、社会も安定思考となって、会社側の立場が低下しています。
社会がかつてと比べて豊かになった現在、従業員は提供する労働の意味を考えるようになり、転職も選択肢の一つになっています。仕事の社会的意義を考えるようになり、逆に従業員も自分自身でキャリア形成を考える必要性が高まってきています。
会社は成果とともに人に焦点を当てることが必要になり、マネジメントに時間を掛けることが重要で、人に向き合う必要が出てきました。
さらにミレニアル世代(1980-1995年生まれ)やZ世代(1996-2015年生まれ)などの新しい価値観を持つ世代が社会で活躍する時代になり、労働力を提供する人の変化も進んでいます。また、価値観や意識が多様化しており、この多様化した状況への深層のダイバーシティーが求められるようになっています。
このような寛容変化が進む中、会社は人をマネジメントしながら成果を出し続けることが求められます。人は納得して働く時の方が、エンゲージメントが高く、生産性も高いのです。働く人のエンゲージメントを高めるには、心をつかむ人材マネジメントが求められています。人は感情を持ち、怒り、悲しみ、喜びます。感情は人材としての価値に影響します。どのようにマネジメントするのがいいのかについて、次のコラムから考えてゆきたいと思います。